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2024.10.13

ドッグトレーニングに「罰」は必要?

ドッグトレーニングに「罰」は必要?

 

ドッグトレーニングにおいて「罰」という言葉を聞くと、多くの方が身体的な苦痛や厳しい叱責を思い浮かべるかもしれません。しかし、罰には様々な形があり、チョークチェーンや体を拘束するような行動修正手段だけでなく、「毅然とした態度での叱責」もこれに含まれます。そして、これらの方法は現在でも一部のトレーナーや飼い主さまによって使用されていますが、現代の動物福祉の観点から見て問題視されることも多くなっています。

 

罰の目的とは?

罰を使う目的は、単純に「今その行動をやめてほしい」という点にあります。そして、その行動を将来もしないようにするための手段として使われます。しかし、これを犬に伝える方法として罰を使用することは、せっかくの愛すべき存在である犬に対して、不要な苦痛を与える行為であり、時には人間関係におけるドメスティック・バイオレンス(DV)と似た構図を持つと言えます。

 

罰のメリットと限界

まず、罰の主なメリットは、即効性があり、一時的に行動を止めることができる点です。例えば、犬が何か望ましくない行動をしている時に厳しく叱ることで、その行動をすぐにやめさせることができます。しかし、この効果は一時的であり、罰を与える人が監視している時だけ行動が改善することが多いです。監視がない状況になると、再び同じ問題行動が出てしまうことも珍しくありません。

 

罰のデメリット

1.効果は一時的

罰は即効性があるものの、長期的な効果には限界があります。例えば、スピード違反を例にすると、罰を受けた直後は運転が慎重になるものの、時間が経つと再びスピードを出すようになるのと同じです。犬の場合も、飼い主さまが見ていない時には再び問題行動を起こす可能性が高くなります。

2.罰のエスカレート

罰を使い続けると、犬がその罰に慣れてしまい、より強い罰が必要になることがあります。これがエスカレートしてしまうと、最悪の場合虐待のような状況に陥ることもあります。罰の強さを増すたびに犬のストレスも増え、問題行動がさらに悪化する危険性があります。

3.飼い主さまの罰を与えることが増加

罰を繰り返し使うことで、飼い主さまが「罰を与える」という行動が習慣化されることがあります。つまり、犬が都合の悪い行動をするたびに罰を与え、罰の使用頻度も増えていきます。このような生活は罰だらけの日常を生み出し、飼い主さまが知らず知らずのうちに罰に依存するようになる可能性があります。

4.飼い主さまと罰が結びつく

罰を与えることで、犬が飼い主さまと嫌悪的な刺激を関連付けてしまうことがあります。これにより、犬が飼い主さまを避けたり、恐れたりするようになる可能性があります。罰ばかりの毎日が続くと、犬にとって飼い主さまとの時間が不快なものになってしまうこともあります。

5.攻撃行動や逃避行動を引き起こす

罰が引き金となり、犬が攻撃的な行動を取ることもあります。恐怖やストレスを感じた犬は自己防衛のために咬んだり、逃げたりする行動をとることがあり、これはより大きな問題に発展する危険性があります。

6.学習性無力感を引き起こす可能性

罰を繰り返し受けることで、犬が「何をしても無駄だ」と感じるようになる「学習性無力感」を引き起こすことがあります。これが進行すると、犬が意欲を失い、うつ状態のような状態になることもあります。一見すると「従順になった」と誤解するかもしれませんが、実際には犬がストレスや不安で動けなくなっているだけです。

 

罰の代わりにできること

罰を使わなくても、望ましい行動を促進する方法はいくらでもあります。重要なのは「今どうやめさせるか?」ではなく、「今後どうしてほしいか?」を考えることです。罰で行動を止めさせるのではなく、望ましい行動ができる環境を作り、その行動をした時に褒めて、問題行動を自然に減らすことができます。

例えば、犬が吠え続ける場合、吠えるのをやめた瞬間に静かでいることを褒めてごほうびを与えることで、「静かにする」という行動が増えていきます。これにより、罰に頼らずに問題行動を改善し、犬との関係も良くすることができます。

 

~まとめ~

犬のトレーニングにおいて、「罰」という方法は一見効果的に思えるかもしれませんが、長期的にはデメリットが多く、飼い主さまと犬の関係にも悪影響を及ぼす可能性があります。罰に頼らず、ポジティブなやり取り(インタラクション)を通じて犬の望ましい行動を引き出すことが、犬との健全な関係を築くための最善で最良の方法です。

 

次回のブログでは、人間社会において、罰することより望ましい行動に対して報酬を与えることで、街の治安が改善した海外の事例を紹介します。